サーバー移行費用の会計処理は?資産計上と費用処理の判定方法も解説

ホームページのサーバーを移行する際、移行費用をどのように会計処理すべきか悩んでいる方は少なくないでしょう。

この記事では、資産計上か費用処理かの判定基準や、具体的な会計処理方法について解説します。適切な会計処理に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

サーバー移行費用の会計処理と勘定科目について

サーバー移行費用といっても、内訳の詳細は以下のように分けられます。

  • 代行サービス料
  • テスト料
  • プログラム修正料
  • レンタルサーバー利用料

それぞれの内訳に該当する費用ごとに、どの勘定科目で処理すべきかを解説します。

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代行サービス料の勘定科目

サーバーの設定作業やデータ移行作業などは、外注費や支払手数料で処理します。外注費ではなく業務委託費や外注工賃を使用している場合は、該当する勘定科目を使いましょう。

外注費は、業務の一部を外部の業者に業務委託した場合に使用する勘定科目です。支払手数料は、手数料や報酬の支払いを処理する勘定科目です。

サービス料が5万円の場合、会計処理の例を以下に示します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
外注費50,000円普通預金50,000円

なお、ホームページのうちソフトウェアに該当する部分があっても、サービス料は費用処理して問題ありません。サーバーの設定作業やデータ移行作業により、ソフトウェアの価値が高まるわけではないからです。

ソフトウェアを利用するための環境を整備し有効利用を図るための費用は、原則としてソフトウェアそのものの価値を高める性格の費用ではない。したがって、その費用は原則として発生時の費用として処理することが適切である。

会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」

テスト料の勘定科目

サーバーの移行後、コンテンツが正常に表示されるか、機能が正常に動作するかといったテストを行います。このようなテスト作業の対価として支払う支出は、外注費や支払手数料で処理します。

テスト料が2万円だった場合、会計処理の例は次のとおりです。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
外注費20,000円普通預金20,000円

プログラム修正料の勘定科目

サーバー移行時、データベースソフトウェアやPHPのバージョンが異なるなどの理由でプログラムの修正が必要な場合があります。このようなプログラム修正作業の対価として支払う支出は、費用処理するか資産計上するかが問題です。

プログラム修正料に使用する勘定科目は、以下のように判断するとよいでしょう。

  • 機能追加がなければ費用処理
  • 機能の追加や向上があれば固定資産計上

なお、プログラムは税法上のソフトウェアに該当することを前提とします。HTMLやCSSの修正費用は、資産計上せず費用処理しましょう。

機能追加がなければ費用処理

プログラムの修正が修正にとどまり、機能追加がない場合は、修繕費を使って費用処理します。この場合、修正によってソフトウェアの価値を高めたり、耐久性を増したりする効果は認められないからです。

7-8-6の2 法人が、その有するソフトウエアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。

法人税基本通達7-8-6の2

修正料が2万円だった場合、会計処理の例は次のとおりです。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
修繕費20,000円普通預金20,000円

機能の追加や向上があれば固定資産計上

税法上、ソフトウェアについて新たな機能の追加や向上に要した費用は、資本的支出に該当すると取り扱われています。資本的支出は固定資産の取得原価に算入するので、固定資産計上です。

修正料が2万円だった場合、会計処理の例は次のとおりです。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
ソフトウェア20,000円普通預金20,000円

なお、修正料が20万円未満の場合は、機能の追加や向上があったとしても、修繕費として費用処理できます。

ただし、一つの修理や改良などの金額が20万円未満の場合またはおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかな修理、改良などである場合は、その支出した金額を修繕費とすることができます。

国税庁

また、機能の追加や向上といえるかどうか明らかにできない金額が60万円未満であれば、修繕費とすることも認められています。

1 その支出した金額が60万円未満のときまたはその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるときは修繕費とすることができます。

国税庁

レンタルサーバー利用料の勘定科目

レンタルサーバーを移行した場合、新たなレンタルサーバーの利用料も支払います。あくまでも利用料なので、資産計上はしません。

したがって費用処理となり、使用する勘定科目は通信費、支払手数料、広告宣伝費、賃借料のいずれかです。情報発信のための費用なので、一般的には通信費が使用されるといわれています。

勘定科目概要
通信費通信に要した費用を処理する
支払手数料手数料や報酬の支払いを処理する
広告宣伝費不特定多数に向けた広告宣伝の費用などを処理する
賃借料賃借の対価を処理する

レンタルサーバー利用料が5,000円の場合、会計処理の例は次のとおりです。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
通信費5,000円普通預金5,000円

レンタルサーバーや保守について1年超えの前払いをした場合

レンタルサーバーの利用料は、1ヶ月分ではなく3年分などまとめて支払うと月額換算で安くなることがあります。保守費用も、1年超えの契約をして数年分まとめて支払う場合もあるでしょう。

しかし、1事業年度の損益を計算するうえで、収益と費用は対応させなければならないといった会計の原則があります。費用の発生は今年でも、収益が実現するのが来年なら、その経費は来年の分とするといった考え方です。

前払費用勘定を使って費用配分する

費用収益対応の原則に基づくと、まだサービスの提供を受けていない金額は、前払いしていても費用とするのは避けるべきです。

そこで、以下のように前払費用を使って費用を適切な事業年度に配分します。

会計処理の例

仮にレンタルサーバーの利用料が年額1万円として、3年分を支払ったとします。

当期分の1万円は当期の費用にできますが、翌期分、翌々期分の金額はまだ費用にはできません。支払時の例は次のとおりです。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前払費用20,000円普通預金30,000円
通信費10,000円

実際には事業年度の中途で費用を支出することがあるため、当期対応分は月割で計算します。仮に決算月が12月で6月に支出した場合、当期分は「3年分の金額30,000円×6ヶ月÷36ヶ月=5,000円」です。

なお、長期前払費用と短期前払費用とに分けて処理する例もありますが、本記事では省略します。

続いて、翌期に入ったら2年目分の1万円を費用にできるので、以下のように前払費用を通信費に振替えます。翌々期も同様です。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
通信費10,000円前払費用20,000円

ソフトウェアを資産計上するか費用処理するかの判定方法

サーバーの移行にあわせて、新たにソフトウェアを取得することがあります。その取得費用を資産計上するか費用処理するかの判定方法を紹介します。

なお、紹介する判定方法は、購入した場合など、自社で制作したソフトウェアではないものが対象です。

将来の利益貢献が確実かどうか

資産計上するか費用処理するかは、取得したソフトウェアについて、将来の利益貢献が確実かどうかが判定基準です。詳細は次のとおりです。

自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか 不明な場合には、費用処理する。

会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」

なお、ソフトウェアの取得時に設定作業や自社の仕様に合わせるための付随的な修正作業を行った場合、かかった費用の額は取得価額に算入します。

そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業および自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、取得価額に算入します。

国税庁

サーバー移行時のソフトウェア修正作業は、通常、費用として処理します。これは、移転前の機能を維持するための支出といえるからです。

一方、新たにソフトウェアを取得する場合、機能の維持ではなく事業に使用するための費用といえるため、資産計上します。

資産計上した場合の償却方法

ソフトウェアを資産計上した場合、税法上、定額法で減価償却します。償却期間は、法定耐用年数の5年です。

つまり、ソフトウェアの取得にかかった金額は、5年間にわたって毎年同じ額を費用(必要経費・損金)にします。

会計上も、耐用年数はソフトウェアの利用可能期間によるべきとしつつ、原則5年以内の年数としています。また、5年を超える年数とするときは、合理的な根拠が必要です。

サーバー移行費用の会計処理に関するよくある質問

サーバー移行費用の会計処理に関する、よくある質問にお答えします。

トレーニング費用はどう処理する?

ソフトウェアの導入時、操作のトレーニングにかかった費用は、発生した事業年度の費用とします。トレーニング費用はソフトウェアの価値を向上するものではないため、資産計上はできません。(実務指針16項

データコンバート費用とは?

新しいシステムでデータを利用するために、旧システムのデータをコンバート(移行)するための費用です。データコンバート費用は発生した事業年度の費用とします。(実務指針16項

サーバーの耐用年数は?

平成13年3月までは6年でしたが、同年4月以後は5年です。(耐用年数省令別表第一

ソフトウェアの耐用年数は?

利用目的に応じて以下のとおりです。

利用目的耐用年数
研究開発用3年
複写して販売するための原本3年
その他のソフトウェア5年

まとめ:サーバー移行費用の会計処理を理解しよう

サーバー移行費用は、代行・テスト料部分は外注費、プログラム修正料部分は機能追加がなければ修繕費、あれば資産計上します。レンタルサーバー利用料については通信費で処理できます。

サーバー移行時にソフトウェアを新たに取得した場合、将来の利益貢献が確実であれば資産計上しますが、そうでなければ費用処理です。

サーバーや販売目的ではないソフトウェアについて資産計上した場合、定額法により耐用年数5年で減価償却します。

サーバー移行費用の会計処理に悩んだときは、ぜひこの記事を参考に適切な処理をしましょう。