新規顧客の獲得や販売促進を行うテレマーケティングは、営業活動の効率化や売上の向上を目指す多くの企業で活用されています。しかし、大変という声もあることから導入をためらう人もいるのではないでしょうか。
テレマーケティングはポイントを押さえた上で実施することで、効果的な運用が可能です。テレマーケティングが大変なのはなぜ?理由や効果的な実践方法を解説
テレマーケティングが大変と言われる理由(導入面)
テレマーケティングの導入にあたって大変と言われるのは、以下の理由があります。
- 環境の構築に時間がかかる
- コストがかかる
- 人材の育成が必要
- マニュアルやリストの作成が必要
テレマーケティングは環境整備から人材配置まで、さまざまな準備が必要です。ここからは、導入する際に大変と言われる理由を詳しく解説します。
環境の構築に時間がかかる
テレマーケティングで必要なのが、電話システムの設置や専門部署の立ち上げや、適切な環境の構築です。電話システムは、テレマーケティングに適した機材やネットワークを導入しなければいけません。
また専門部署を設けるにあたり、人材の再配置やオフィスの確保、新たな設備の導入も必要になります。運営体制が構築されるまでに時間がかかり、即効性が感じにくいというデメリットがあります。
コストがかかる
テレマーケティングは設備や機材、オペレーターの採用・育成など、環境を整備する上であらゆる面でコストが発生します。また、人件費やネット環境、サービスの月額費用などのランニングコストも含めると、大きな出費になるでしょう。
運用後に見込まれる利益や予算と合わせて、費用対効果を見極めた上で導入することが大切です。
人材の育成が必要
質の高いテレマーケティングを実施するためには、オペレーターとなる人材の育成が不可欠です。正しい言葉遣いやコミュニケーションスキルはもちろん、自社の製品・サービスの知識や営業のスキルも求められます。短期的な習得は難しいため、教育担当者や研修期間の確保など多くのリソースが必要です。
社内での育成が難しい場合には、オペレーターに特化した研修プログラムを外注する手段もあります。運用後もオペレーターとして活躍するまでには慣れも必要なため、テレマーケティングの効果を得るまでには時間がかかるでしょう。
マニュアルやリストの作成が必要
テレマーケティングを効果的に実施するためには、対応マニュアルをはじめ以下の準備が不可欠です。
- トークスクリプト
- ターゲットリスト
- データシート
- FAQシート
これらを作成するためには、ターゲットの調査・洗い出しやシーン別のトークの考案、過去の問い合わせの整理など行う必要があります。アプローチの質を左右する重要な内容ですが、作成には手間がかかるため、導入に時間がかかる理由の1つといえるでしょう。
テレマーケティングが大変と言われる理由(営業面)
テレマーケティングは電話越しという特殊な営業スタイルになることで、以下のような点が大変と言われています。
- 顧客と信頼関係を築きにくい
- 顧客に資料の共有ができない
- 迷惑電話と勘違いされる
- 商談内容を忘れやすい
- クレームの対応が必要
ここからは、それぞれの理由について解説します。
顧客と信頼関係を築きにくい
テレマーケティングは顧客と声のみでやり取りになることで、信頼関係を築きにくいです。お互いの意図を汲み取りにくく、話を引き出すことに時間がかかるためです。
また、相手が忙しい時間帯であれば電話すること自体が非常識と捉えられるかもしれません。相手の状況に配慮したコミュニケーションが取れないと、自社の評価を下げることにもなるため、注意が必要です。
相手にとって有益な情報の提供や、ニーズを把握した上での提案を続ければ、信頼関係につながります。しかし、成果が出るまでに時間がかかる場合もあるため、根気強くやり取りを行う必要があるでしょう。
顧客に資料の共有ができない
テレマーケティングでは、資料を見せながらや画面共有しながらの説明ができません。そのため、視覚に訴えかけた説明ができず商品・サービスの魅力を伝えにくいという難しさがあります。
口頭のみで顧客がイメージしやすいよう、具体的にわかりやすく伝えるスキルが求められます。
迷惑電話と勘違いされる
アプローチする人の中には、電話嫌いな人や、迷惑電話に敏感な人もいます。迷惑電話と勘違いされた場合、すぐに切られて話自体が聞いてもらえないこともあります。オペレーターはこのような場合にも屈せず、次の人にアプローチをかけていくタフさが求められるでしょう。
また、迷惑電話と思われないような言い回しや話し方などの工夫も必要です。
商談内容を忘れやすい
顔や雰囲気で覚えられないため、詳しい会話の内容を忘れてしまう可能性もあります。必要な情報はデータに残せるものの、一歩踏み込んだ詳細な会話内容まで覚えられないこともあるでしょう。相手が同じ話をしたように感じると、不満につながる可能性もあります。
クレームの対応が必要
テレマーケティングは営業に限らず、ときにはクレーム対応もしなければいけません。自社製品やサービスに不手際があった場合、会社の顔として誠意を持った謝罪が求められます。また、電話営業によいイメージをもたない相手に厳しい言葉をかけられることもあるでしょう。
クレーム対応のマニュアルやトークスクリプトを用意したり、オペレーターをフォローする体制を整備したりする必要があります。
関連記事:テレアポでのクレーム対応のコツは?注意点や言い回しを解説
コミュニケーションミスが起こりやすい
テレマーケティングでは、顧客との間でコミュニケーションの齟齬が発生することもあります。たとえば、契約の意思確認を行ったあとでも相手から「契約したつもりはない」と言われることなどです。会話の内容をよく理解しないまま返答する人もいるため、念入りに意思確認をした上で商談を進める必要があります。
それでもテレマーケティングは必要?
テレマーケティングは大変と言われる一方、営業活動におけるメリットもあります。たとえば、電話一本で顧客にアプローチできるため、効率的な営業につながる点です。移動する時間が省けるため、対面の営業に比べて担当者の負担が軽減される上、短時間で多くの顧客にアプローチできます。
また、テレマーケティングは顧客と直接コミュニケーションが取れますが、お互いに顔は見えません。そのため、顧客も率直な意見が言いやすく、ニーズを拾い製品・サービスの改善につなげやすいというメリットもあります。
新規顧客の獲得や売上の拡大などを目指す企業にとっては、効果的なマーケティング手法といえるでしょう。
テレマーケティングを効果的に実践する方法
難しいことが多いと言われるテレマーケティングですが、以下の方法によって効果を高められます。
- 目的を明確にする
- 環境の構築は慎重に行う
- トークスクリプトを作成する
- 質問・回答集を作成する
- 専用のツールを導入する
- 分析と改善を繰り返す
- 社内で情報共有する
- 意見交換できる場を設ける
- 業者に代行を依頼する
それぞれの方法について詳しく説明します。
目的を明確にする
導入を検討する前には、テレマーケティングを活用して何を実現したいか明確にすることが大切です。目的により、準備内容や運用するマーケティング手法が変わるためです。
たとえば、企業自らがアプローチをかけていく「アウトバウンドマーケティング」は、見込み客へのアプローチを増やせます。新規顧客獲得のチャンスを得たい企業には最適な方法といえるでしょう。電話でのアプローチに成功できるよう、綿密なターゲットリストや、トークスクリプトの作成が必要となります。
一方、広告やDMを見た顧客に電話をかけてもらう「インバウンドマーケティング」は、広告費用などへの投資をしなければいけません。顧客の興味を引くような、魅力的な広告やチラシ、DMなどを用意することが大切です。このように、目的や方針によって事前準備が異なるため、あらかじめ課題や目的を洗い出す必要があります。
環境の構築は慎重に行う
テレマーケティングの運用には時間とコストがかかるため、目的に沿った環境を整備することが大切です。たとえば、電話・FAXとコンピュータを統合させるCTIと、電話通信を管理するPBXの連携は、PCからの架電を可能にします。通話しながらPCの操作ができれば、オペレーターが顧客とのやり取りを記録に残しやすくなるでしょう。
オフィス内の環境や人材配置は、社員の就労環境に関わります。社員のスキルのバランスにも考慮した上で適切な人材を配置することで、質の高いテレマーケティングにつながるでしょう。
トークスクリプトを作成する
オペレーターと顧客の対話の流れを台本形式でまとめたトークスクリプトは、スムーズな営業につながります。顧客のYes・Noの回答に基づいて会話を広げられるため、オペレーター全体で統一感のある営業トークを実施できます。トークスクリプトは、基本的に以下の内容がまとめられていることが多いです。
- 自己紹介
- 用件
- 商品・サービスのメリット
- よくある質問に対する回答
- アポの日程調整
他にも、相手の都合に配慮した言い回しや、負担を軽減できるような表現方法などをまとめておくと、円滑なやり取りにつながるでしょう。
質問・回答集を作成する
顧客から寄せられることの多い質問に対する回答集を用意しておくと、予想外の質問にも慌てることなく対応できます。オペレーターが自信を持って話せるため、商品・サービスの魅力をアピールしやすいです。また、顧客の問いに対し迅速かつ的確な情報を提供することで、信頼関係の構築にもつながります。
専用のツールを導入する
テレマーケティングに適したツールを使用することで、効率よく成果を上げられます。たとえば、通話データの自動集計機能やデータベースの管理機能を備えたシステムがあります。
オペレーターやデータ管理の担当者の負担を減らすことが可能です。効率的にテレマーケティングを実施したい場合は、ツールの導入を検討してもよいでしょう。
分析と改善を繰り返す
テレマーケティングの効果を高め続けるためには、収集した情報やデータを分析して課題を洗い出し、改善していくことが必要です。顧客によってニーズや課題は異なるため、定期的に分析して現状を把握する必要があるでしょう。改善を繰り返すことで、オペレーターのスキルが高まり、成約率の向上につながります。
社内で情報共有する
テレマーケティングで得た情報は、社内で情報共有することで商品・サービスの改善や、オペレーターの対応力強化につながります。たとえば、対応が難しかった顧客の事例を共有すれば、次に似た事例が発生してもスムーズに対応でき、属人化の防止が可能です。
また、オペレーター以外の社員にも共有することで、新しい施策の考案や、違う視点での改善点も発見できるでしょう。
意見交換できる場を設ける
オペレーター同士や商品開発部、サービスに携わる現場など、社員同士が意見交換する場があれば、多角的な視点での課題解決が期待できます。新たな商品知識や事情を理解する機会にもなり、顧客に説明する内容にも深みが出るでしょう。
業者に代行を依頼する
自社でテレマーケティングの運用に割けるリソースがない場合、代行会社に依頼することも1つの手段です。
代行会社に依頼する場合、サービス範囲や実績、評判など事前に確認し、自社の目的に合った会社を選びましょう。料金設定も会社によってさまざまなので、自社がサービス内容に納得できることが大切です。
テレマーケティングをうまく利用して新規顧客の獲得につなげましょう
テレマーケティングは事前準備や特殊な営業方法で大変なことが多いマーケティング手法です。しかしうまく活用することで、新しい顧客層へのアプローチや細かなニーズのキャッチができ、売上の拡大につながります。
効果的に実施するためには、目的を明確にした上で適切な体制を構築していくことが大切です。また、自社でカバーが難しい部分は、専用ツールの活用や代行会社への依頼もできます。テレマーケティングを活用して、自社の事業をさらに発展させましょう。